相続
2019/04/01

「事業承継税制」の要件が緩和される?2019年度税制改正

(写真=Proxima Studio/Shutterstock.com)
(写真=Proxima Studio/Shutterstock.com)
非上場株式等を相続・贈与する際は、相続税・贈与税の納税猶予や免除が受けられる制度があります。いわゆる「事業承継税制」と呼ばれ、2008年10月以降の相続・2009年4月以降の贈与について適用されています。その後2018年に特例措置が創設されました。

この制度創設の目的の一つには、よりスムーズな事業承継の促進が挙げられます。今回は事業承継税制の概要と、2019年の税制改正で一部緩和された内容についてもお伝えします。

納税猶予制度の目的・概要

中小企業の数は企業全体の9割以上を占め、日本の産業を支えています。ただし日本全体の問題の一つである少子高齢化が中小企業でも進んでおり、経営者の高齢化が進んでいるにもかかわらず、後継者不足・人材不足等の影響で世代交代が進んでいないという現状があります。また、後継者へ事業を引き継ぐ相続・贈与の際の税負担が大きくなることも事業承継が進んでいない要因に挙げられていました。

このような背景があり、事業承継時の税負担の軽減とスムーズな世代交代の促進を目的に創設されたのが、事業承継税制である「非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予及び免除」の制度となります。

現在この制度には、一般措置と特例措置の2つがあり、主な違いは下記の通りです。
 
特例措置と一般措置の比較
  特例措置 一般措置
事前の計画策定 5年以内の特例承継計画の提出
(2018年4月1日から
2023年3月31日まで)
不要
適用期限 10年以内の贈与・相続等
(2018年1月1日から
2027年12月31日まで)
なし
対象株数 全株式 総株式数の最大2/3まで
納税猶予割合 100% 贈与:100%
相続:80%
承継パターン 複数の株主から
最大3人の後継者
複数の株主から1人の後継者
雇用確保要件 弾力化 承継後5年間
平均8割の雇用維持が必要
経営環境変化に
対応した免除
あり なし
相続時精算課税の適用 60歳以上の者から
20歳以上の者への贈与
60歳以上の者から20歳以上
の推定相続人・孫への贈与

一般措置の場合、後継者が自社株を取得した時にかかる相続税・贈与税について、総株式数の2/3を上限として、相続税は取得した自社株にかかる相続税額の80%、贈与税は取得した自社株にかかる贈与税額全額の納税が猶予されます。相続税は後継者の死亡等、贈与税は先代経営者の死亡等、一定の要件を満たせば猶予されている納税が免除されます。

ただ、対象となる株式の割合が少ないということや、納税猶予を継続するための従業員の雇用要件が厳しい等の理由に加えて、要件等を満たせなくなった場合には納税猶予が取り消しとなり、猶予税額に加えて利子税を納める必要があることなどが、制度の利用に二の足を踏む理由となっていました。

そこで2018年の税制改正で特例措置が創設され、相続税の納税猶予割合を100%にして事業承継時の税負担を無くしたり、事業承継後の雇用要件を実質的に撤廃したり、自社株を承継する際の現経営者・後継者の要件を緩和したりする等して、制度をより活用しやすくしました。

その代わり特例措置を利用する際は、事業承継についての計画書を作成し、認定を受けることとなっています。またその計画書の提出期限は2023年3月31日までとなっており、2027年12月31日までの自社株の相続・贈与が対象となっています。

税制改正で受贈者の年齢引き下げや制度利用の手続き緩和

2019年の税制改正では、現行の一般措置・特例措置ともに、次のような要件が緩和・追加されることとなりました。

●1.贈与税の納税猶予における受贈者の年齢要件を18 歳以上に引き下げ

現行の「20歳以上」の年齢要件を引き下げることで、より後継者の範囲を広げ制度の活用を促進する目的があります。なおこちらは、2022年4月1日以降の贈与について適用することとなっています。

●2.一定のやむを得ない事情により認定承継会社等が資産保有型会社・資産運用型会社に該当した場合においても、その該当した日から6月以内にこれらの会社に該当しなくなったときは、納税猶予の取消事由に該当しないものとする

資産保有型会社は、有価証券や自社で使用しない不動産・現預金等の特定資産の保有割合が70%以上、資産運用型会社は、これら特定資産からの収入が全体の75%以上ある会社をいいます。そもそもこのような会社は本制度を活用できないのですが、認定を受けた後に該当してしまった場合には一定期間の猶予を与えるという内容です。

●3.非上場株式等の贈与者が死亡した場合の相続税の納税猶予の適用を受ける場合には贈与税の納税猶予の免除届出の添付書類を不要とする等、手続の簡素化を行う

こちらは、本制度を活用する際の手続きを簡素化する内容となっています。

制度を利用する際には専門家に相談を

本制度、特に特例措置については、納税猶予割合・対象者等を拡大して、事業承継税制の利用促進を図るとともに、中小企業の事業承継をサポートすることを目的としています。一方で、承継計画の作成や納税猶予の取消要件等、利用にあたっての要件や注意点もありますので、制度の内容を理解した上で、専門家のアドバイスを受けながら制度の利用を検討する必要があります。

今回の改正は、2018年の特例措置に続き制度利用の促進を目的としていますが、内容としては小幅な改正となっています。ただ今後も、より制度を活用しやすくする可能性がありますので、今後の改正内容には注目していく必要があります。
 

執筆:株式会社ZUU

>> 【無料eBookプレゼント】「相続トラブル」に巻き込まれないためには?

>>お金の専門家に相談してみる

>>おすすめセミナーはこちら

 

【オススメ記事】
相続財産を管理するのは誰?家族がいない場合は?
初心者こそ知っておきたい相続に必要な書類を解説
個人年金と相続対策についてのあれこれ
相続トラブルを防ぐために今できること5つ
高級感あふれるプライベート空間「プレミアサロンうらわ」訪問記

PREV 【まとめ】あらかじめ知っておきたい相続、生前贈与の知識。「自分だけは大丈夫」が危ない
NEXT 自身の死後に「相続争いを残しやすい人」には特徴があるらしい