事業承継
2018/02/13

100年企業に学ぶ事業承継術

(写真=Supertrooper/Shutterstock.com)
(写真=Supertrooper/Shutterstock.com)
日本は創業100年を超える老舗企業が多く、世界でも突出していると言われています。調査会社の東京商工リサーチが公表している『全国「老舗企業」調査』によれば、2017年に創業100年以上となる老舗企業は全国で3万3,069社あり、前回調査の2012年から5,628社(20.5%)も増加したことになります。
このように老舗企業が増えている一方で、後継者問題など事業承継の課題を抱えている中小企業も増えているのです。そこで今回は、100年以上生き残っている企業の概況を見て、事業承継のポイントを探ってみました。

事業承継を取り巻く厳しい状況


100年企業が増加している一方で、中小企業は厳しい状況にあります。中小企業庁が2016年12月に発表した『事業承継ガイドライン』によれば、国内の企業数の約99%を占める中小企業は、1999年から2015年までの15年間に約100万社も減少しています。

同時に経営者の交代率も下降しており、帝国データバンクの「全国社長分析」によれば、1970~80年代には5%であった経営者の交代率が、2011年には2.46%にまで半減しました。数値は2012年から2016年にかけて上昇しているものの、1990年代前半の水準には回復していません。近年の企業の廃業は業績の悪化が主要な要因だったのでしょうか。必ずしもそうではありません。

中小企業庁の『2017年版「中小企業白書」』によれば、2013年から2015年までに廃業した企業の廃業直前の経常利益率(以下、利益率)を見ると、黒字だった企業が50.5%と半数以上で、利益率10%台の企業は13.6%、利益率が20%台の企業も6.1%ありました。黒字や高い利益を出している企業でさえ、廃業しているのです。

そこで日本政策金融公庫の「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」を確かめます。「廃業予定企業の廃業理由」を見ると、最も多い理由は「当初から自分の代かぎりでやめようと考えていた」の38.2%で、2位が「事業に将来性がない」の27.9%、そして3位から5位までは「子供に継ぐ意志がない」「子供がいない」「適当な後継者が見つからない」でした。3~5位を合計すると28.6%で、実質的に後継者不足が2番目の理由となっていることが分かります。

このような厳しい状況で、企業が事業承継をスムーズに行うためには何が必要なのでしょうか。

老舗企業の強みに学ぶ


帝国データバンクの2008年調査によれば、全国の長寿企業4,000社に「老舗企業の強み」を聞いたところ、1位が「信用」で73.8%、2位が「伝統」の52.8%、3位が「知名度」の50.4%という結果になりました。以下、「地域密着」、「厚い信頼」と続いています。

つまり、老舗企業は数字には現れない無形の知的資産が自社の強みであると考えているのです。このことから、企業が何代にもわたって承継されていくためには、無形の知的資産を大切にする必要があると言えます。

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老舗企業が大切にしていること


また、前述の帝国データバンクの調査では、「今後も生き残るために必要なもの」という質問への回答状況も紹介されています(複数回答可)。

1位が「信頼の維持」の65.8%、2位が「進取の気持」の45.5%、3位が「品質の向上」の43.0%でした。以下、「地域密着」、「伝統継承」、「技術の継承」、「顧客の継承」と続いており、やはり無形の知的資産を守ることが重視されています。

そして注目すべきは、老舗企業が決して保守的なだけではないことが、自らすすんで物事に取り組む「進取の気持ち」(2位)に現れていることです。代々引き継がれてきた経営理念や家訓にしばられるだけではなく、新しい時代の変化に積極的に取り組む姿勢の重要性を説いているのです。

老舗企業の柔軟な後継者選び


日本の老舗企業はオーナー制度のもとに引き継がれてきましたが、他国では後継者が必ずしも血縁者であることにこだわってきませんでした。

これは日本的な「家」制度が影響を与えていると考えられています。後継者の候補として挙げやすいのは長男を筆頭とした血縁者ですが、より重視されたのは「誰がこの企業の経営者としてふさわしいか」ということです。従業員の中から経営者にふさわしいと見込まれれば養子や娘婿として後を継がせたのです。

帝塚山大学文学部の河口充勇准教授と立命館大学経営学部の竇少杰(トウショウケツ)助教の研究論文『京都老舗企業の事業承継に関する一考察──株式会社半兵衛麩を事例として──』では、このような日本の老舗特有の後継者選びについて以下のように考察しています。

「後継者選択の最も重要な基準となっているのは、“共同体”の精神、理念を継承し、体現し得る人物であるかどうかであって、これに比べると血縁的要素や能力的要素は、まったく考慮されないわけではないにせよ、二義的な意味合いしかもたないといえよう。」

この考え方は、中小企業の後継者不在問題の解決を社員や社外に求め、M&Aにより事業を継続させることを考慮することの重要性を示唆していると言えるでしょう。

100年企業からのヒント


社会環境や経済状況の変化がめまぐるしい時代においても、老舗企業は無形の資産を守り続けてきました。しかし、老舗企業は保守的なだけでなく、常に「進取の気持ち」を持ち、新しいことに挑戦を続けることの重要性も認識しているのです。

事業承継とは、自社が培ってきた強みを改めて認識し、新しいことへの挑戦を続けてさらに成長するための機会になり得ます。時代の変化を生き抜いてきた老舗企業の在り方は、事業承継を検討する経営者にとってもヒントになるのではないでしょうか。
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