事業承継
2018/02/13

経営者が事業保険を使って自社株評価を抑えて贈与をするスキームとは

(写真=Chinnapong/Shutterstock.com)
(写真=Chinnapong/Shutterstock.com)
相続が発生すると、オーナー経営者が保有している自社株に対しても相続税がかかってきます。そこで、相続税対策として自社株の評価を下げた上で生前贈与しておく方法が考えられます。自社株の評価を下げる方法にはいくつかのパターンがありますが、今回は事業保険を活用する方法を紹介します。どのような保険を活用すれば良いのか、その際に注意すべき点は何かという視点で解説していきます。

自社株の評価を抑える理由


● 評価額をもとに税額が算定される
自社株は相続するにしても、贈与するにしても、それぞれ相続税や贈与税の課税対象となります。相続税や贈与税は自社株の評価額に税率を乗じて計算されるため、いかに評価額を抑えるかが節税のポイントとなります。

● 自社株の評価方法は?
相続や贈与が行われた場合、国税庁の「財産評価に関する基本通達」に従って財産の評価額を算定することになります。自社株の場合、主として「類似業種比準価額方式」、「純資産価額方式」、「配当還元方式」という3つの方法で評価されます。特に非上場のオーナー会社で同族株主が株式を取得する場合には「類似業種比準価額方式」と「純資産価額方式」、併用方式が使用されます。

● どのようにすれば自社株の評価が下がる?
「類似業種比準価額方式」や「純資産価額方式」では会社の利益や純資産額を抑えることで自社株の評価を下げることができます。つまり、なるべく会社に利益をため込まないようにしたり、不動産など評価が低く算定される資産を保有することで純資産額を抑えたりすることが有用となります。今回のテーマである事業保険を活用することによっても、保険料が損金として計上でき、利益や純資産を抑えることが可能となります。

事業保険の活用方法について


● 事業保険とは?
事業保険とは、法人が生命保険などを活用することにより、経営者や役員に万が一のことがあった場合の保障、従業員の福利厚生、将来の支出に対する原資を確保するものです。それと同時に、保険の種類や条件によって法人税などの節税や自社株対策にもなることが注目されています。以下では、保険の種類ごとの特徴を紹介しましょう。

● 長期平準定期保険
長期平準定期保険は定期保険の一形態です。定期保険とはいわゆる「掛け捨て」の保険を意味します。つまり、満期保険金目当てではなく万一の場合の保障が主目的となる保険と言うことができます。ただし、実際には、途中で解約した際の「解約返戻金」を充実させた商品が多く、会社が受け取る解約返戻金を役員退職金の原資にするなどの活用方法が一般的になっています。

その中でも長期平準定期保険は特に保険期間を通じて保険料が一定のものを指します。役員などを被保険者、会社を受取人とすることで、保険の条件に応じて保険料の全額あるいは1/2を会社の損金として処理することが可能となります。

● 逓増定期保険
逓増定期保険も定期保険の一形態であり、上記の長期平準定期保険と似ています。逓増定期保険では、生命保険金の額が保険期間の後半に増加することが特徴となっています。

当初の保険金を低く抑える一方で、5年から10年など比較的早い段階で解約返戻金がピークを迎えるように設計されています。そのため、解約返戻金がピークを迎えた付近で解約して役員退職金などの原資として活用されています。保険の条件に応じて保険料の1/2か1/3、1/4を会社の損金として処理できるものが一般的です。

● 養老保険
養老保険は、万が一の場合の保障に加えて、保険期間の満了時に満期保険金を受け取ることができる保険を指します。つまり、「掛け捨て」ではなく、貯蓄性のある保険と言うことができます。

従業員を被保険者、死亡保険金の受取人を従業員の家族、満期保険金の受取人を会社とする契約が一般的です。その場合、一定の要件を満たせば保険料の1/2を会社の損金として処理することが可能となります。

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自社株を贈与する方法


上記のような事業保険を活用して自社株の評価額の上昇を抑制したところで、自社株を生前贈与することを検討します。

● 贈与税の暦年課税
贈与税には年110万円の非課税枠があります。つまり、1年間で贈与を受けた財産の額が110万円以下の場合には贈与税がかかりません。仮に年110万円相当の自社株を10年間にわたり贈与すれば、1,100万円の自社株を税金なしで後継者に移転することが可能となります。

このように年度単位で課税が行われる方式を「暦年課税」と呼びます。なお、暦年課税は受贈者を基準に考えるため、2人に贈与する場合には年220万円、3人に贈与する場合には年330万円まで無税で贈与することができます。

● 相続時精算課税
上記の暦年課税に代えて「相続時精算課税」を選択することもできます。相続時精算課税では、贈与時に2,500万円の特別控除が認められており、それを超える部分については一律20%の税率で贈与税が課されます。その後、相続が発生した際に過去の贈与分も合わせて、改めて相続税として計算し直す制度です。

相続時精算課税を利用すれば、生前贈与を行った際に多額の贈与税が課されることがないという利点があるほか、贈与後に後継者の経営努力によって自社株の評価が高くなっても相続税額に影響しないというメリットがあります。

● 中小企業経営承継円滑化法による贈与税の納税猶予制度
中小企業経営承継円滑化法により、会社、後継者、先代経営者のそれぞれについて一定の要件を満たし、都道府県知事から「円滑化法の認定」を受けた場合、贈与税や相続税の納税猶予制度を活用することができます。

経営承継円滑化法では贈与税などの納税猶予を受けることができます。また、一定の金融支援を受けたり、贈与された自社株を遺留分から除外する民法上の特例を受けたりすることができるため、合わせて活用を検討してみると良いでしょう。

注意すべき点について


● 事業保険を活用する時期と贈与のタイミング
財産評価基本通達に従うと、自社株の評価額を算定する際の基礎数値は原則として直近の決算書をもとにします。したがって、事業保険の保険料を損金として処理した事業年度に自社株を贈与しても、利益や純資産額の減額効果を享受することはできません。そのため、事業保険を活用する時期と贈与のタイミングは入念に計画する必要があります。

● 相続開始前3年以内の贈与
相続税の計算においては、相続開始前3年以内に贈与された財産は相続財産に含めることになっています。そのため、毎年110万円の基礎控除内で暦年贈与を行っていても、相続開始前3年以内の贈与については相続税の対象となってしまいます。

早めの対策が肝!


以上のことから分かるように、事業承継の対策は計画的に行うことが重要となります。また、早めに着手するほど対策の選択肢の幅も広がります。特に、事業保険にはさまざまなタイプがあり、タックス・プランニングをしっかり行うことで初めてメリットが得られるものもあります。まずは専門部署のある金融機関の窓口などに相談してみるのがおすすめです。

執筆:株式会社ZUU

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