事業承継
2018/10/22

「医業承継」の流れと税に関する注意点 引退への備えは早めに始めよう

(写真=Minerva Studio/Shutterstock.com)
(写真=Minerva Studio/Shutterstock.com)
「高齢で診療の継続が難しくなった」「もともと早期リタイヤを考えていた」――。こうした理由から診療所やクリニックを後継者に承継する場合には、承継の流れや概要、税制面の注意点、相続税や贈与税の納税猶予に関する特例制度などを事前に知っておく必要があります。承継は経営者である医師にとっても一大イベント。しっかりとした知識を持って臨むべきです。

医業承継の流れと概要を確認

まず個人診療所についてですが、親族内に候補者がいる場合には親族内承継となりますし、後継者候補がいない場合にはM&A(合併・吸収)も視野に入れる必要があります。医療法人の場合は、ほかの医療法人との合併も選択肢の一つになるでしょう。

いかなる類型においても、さまざまな物事を引継ぐことになります。たとえば医療機器などの設備、土地・建物といったものから、顧客である患者さま、従業員についても新しい体制に引き継がれるようにしなければいけません。医業承継計画をしっかりと策定し、これに基づいて手続きを進めることになります。

経営を引き継ぐ後継者に対しては、大切にしている理念や事業の現状を伝えなければなりませんし、従業員への説明も必要でしょう。そのため、医業承継には十分な時間をかけてじっくりと行うものだという認識で取り組まなければなりません。

税制面での注意点とは?

医療法人が医業承継を実行する場合には、特に税制面への配慮が必要です。財団を除く医療法人は大きく「持分あり医療法人」と「持分なし医療法人」に分けられますが、ここでは割合の多い持分あり医療法人のケースを考えていきます。

持分あり医療法人が事業承継を行う場合、出資持分を相続・譲受する後継者や現経営者などが、多額の納税をしなければいけない場合があります。医療法人は医療法で配当が禁止されており、多額の含み益を抱えていることが多いのです。このため課税が生じる可能性が高いと考えられるわけです。

個人が納税可能なだけの金融資産を有していないときは、納税資金を延納するか借入しなければいけません。延納も借入もせず、なおかつその医療法人に現金化できる資産がない場合は、M&Aで売却することも検討する必要が出てきます。

また、特定医療法人や社会医療法人などの持分なし医療法人へ移行することで、結果的に税負担を軽減する方法もあります。ただ持分なし医療法人へ移行した場合には、持分あり医療法人に後戻りできないため、留意が必要です。

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納税猶予の特例措置とは?

税負担が課題となって事業承継が円滑に進まないことを防ぐため、国は医業継続に関する相続税・贈与税の納税猶予などの特例措置を設けています。

この特例措置では、持分あり医療法人から持分なし医療法人に移行する計画の認定を受け、期限までに移行を終えた場合は、医療法人の持分を有する個人が持分放棄して医療法人に経済的利益が出ても、その分には贈与税が課されないことになっています。

平成29(2017)年度の税制改正では認定期間が3年延長されたほか、役員数や役員の親族要件なども緩和され、贈与税の非課税対象が大幅拡大するに至りました。

持分あり医療法人が医業承継を検討する場合には、この納税猶予の特例措置に関する知識ついてはぜひ頭に入れておきたいところです。

「情報」の扱い方も成否につながるポイント

医業承継においては「情報」をどう取り扱うかも重要なポイントです。ここで言う情報とは2種類あります。一つは現在経営している個人診療所や医療法人に関するもの。もう一つは医業承継を行おうとしていること自体を指します。

後継者が自分の子供である場合、承継後も親子関係は続きますし、必要に応じてサポートすることも必要です。承継の最中には、親子で協力して事業の磨き上げを進める必要もあります。不都合な情報をむやみに後継者に隠すと、トラブルの誘発や親子間の不和につながります。

M&Aによる売却を行う場合には、従業員や別の関係者にその情報が漏れることはよしとされません。余計な不安を生じさせる恐れがあり、経営に影響を与えかねないからです。

医業承継は、こうしたさまざまな点について現状や方針を明確にしながら、時間をかけて進める必要があります。開業医、医療法人の経営者として最後の大仕事ですから、専門家の助言を求めながら、慎重に進める姿勢が求められます。

執筆:株式会社ZUU

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